trajectory

思いついたことや考えたことの記録。ブログの目的は情報の対称化(判断材料の提示、標本収集など)です。雑記やはてブの補完なども。更新はムラあり。

ハトクロとアツギと吉野家と。

 今回は短めに。


 それぞれのケースで問題視された問題の度合いとかはいったん置いておく。問題の構造、骨格の話だ。

 ある小売企業のサービス(PR企画、幹部の発言、顧客対応等)を問題視した顧客が、ネットで「もう利用したくない」などと反発。直接の顧客や利害関係者ではない外野(世論)も、各々の意見を発信した。
 顧客及び世論の反応を重く見た企業は、何らかの対応を行った。

 とてもよくある話だと思う。商品そのものの問題ではないのも同じ。
 ただ、その「何らかの対応」に至るまでの拗れ方と、「対応」後の状況が、ハトクロとアツギ、吉野家ではだいぶ違う。


 吉野家はごく一般的なパターン。すぐに決着がついた。
 吉野家は不特定多数の老若男女が対象の牛丼チェーンで、きっかけは男性幹部の発言。2022年4月16日問題発生。
 NHKの放送コードに抵触するほど性的に過激な表現、自社の商品へのプライドのなさ、常連客への蔑視が顧客及び世論に問題視され、男性幹部は4/18に処分された。
 新商品発表イベント中止など影響はあったが、幹部の処分によりとりあえず幕引きとなった。
 
 吉野家ケースでは、「もう利用しない」と発言した顧客が「どうせお前は顧客じゃないくせに」「ヴィーガンめ(?)」などと決めつけられたり、外野の無責任な発言がこれまた外野から「営業妨害」と指弾されたり、幹部の言論が「表現の自由」で擁護されたり、ということは殆どなかった。
 今はまだ客足が遠のいているかもしれないが、騒ぎは終わり、日常が戻った。


 対して、アツギとハトクロ。2つのケースはよく似ている。 
 アツギは不特定多数の女性が対象のレッグウェアメーカーで、きっかけは女性担当者のPR企画。2020年11月2日問題発生。
 ハトクロは胸の大きな女性が対象のニッチなネット専売ブランドで、きっかけは女性の代表者の発言・顧客対応。2022年4月 日問題発生。

 ともに女性の姿態を描いた「萌え絵」に絡む対応が顧客及び外野に問題視された。
 普及品とニッチ商品の違いはあるが、顧客層は基本的に女性で、男性は顧客として期待されていない。
 しかし起きたことは、「もう利用しない」と発言した女性顧客が「どうせお前は本当は顧客じゃないくせに」「フェミめ」「ジェンクレめ」と決めつけられたり、外野の無責任な発言がこれまた外野に「営業妨害」と指弾されたり、企画や発言が「表現の自由」で擁護される、ということだった。なんと、顧客ではないはずの男性から。

 アツギは女性担当者を担当から外し、企画を中止して対応するものの、いまだに新製品等の発表に「あ、アツギね…(変な男がまとわりついてるメーカーね)」と反応される。
 「アツギ」とウェブ検索しようとすると「炎上」と補完され、類似のケースがあるとこのように言及される。

 ハトクロは4/30に謝罪対応したが、その後むしろ騒ぎは大きくなっていた様子で、5/2にはブランドへの名誉毀損・営業妨害に対する法的措置を発表。誰の、どんな発言が念頭にあるのかは明言されていない。

 これって何なんだろう、という話。

  • 顧客層が女性に限定される企業の
  • 女性担当者による
  • 女性の姿態を描いた「萌え絵」の利用/言及が
  • 女性顧客に反発され(外野の女性からも同意の声が上がり)
  • なぜか男性が乱入。声を上げた顧客の思想を「フェミ」と決めつけ、「どうせ顧客ではないくせに」と当事者性を否定し、「モンスタークレーマー」と罵り、少しでも批判的な意見があれば「営業妨害」と指弾し、女性担当者の企画/発言を「表現の自由」「内心の自由」で擁護する。
  • ⇒そして混乱へ

 いちばん顧客じゃないのは、当事者じゃないのは、部外者なのは、乱入してきた男性じゃん。
 君らがタイツを履く女性や胸の大きな女性の何を知っているというのか?
 タイツは憧れのセクシーオシャレアイテムで、ババアは履かないと思っていたり(毎日履いてる防寒具だよ)、Dカップだと胸が大きくて服に困っていると思っていたり(日本人女性の26.3%、マジョリティだよ)するような男性たちが、いったい女の何を知っているというのか。

 吉野家のさらっと終わった炎上と、ハトクロ、アツギの燻ぶり方のこの違い。


 まじ何なんだろう、と思うけど、もしかして、「萌え絵(に含まれるエロ要素の濃度)」×「表象」の認識がこの混乱の原因なのかもしれない。
 自分は女を正しく認識できると驕る男性たちを呼び込み、顧客の女性をジャッジさせてしまうのは。


 今ハトクロが巻き込まれている混乱が早く沈静化し、いったん離れた従来の顧客も安心してショッピングや着画の共有ができるようになり、新規の顧客も増えるといいなと思います。
 とりあえずここまで。

      • 2022/05/05 13:40

午後ティー、ルミネと、三回目の標本収集。 - trajectory
続き書きました。よければ併せてお読みください。